文・編集:upnow media編集部 | 編集方針
コワーキングスペースやシェアオフィスは、ここ10年ほどで働く場所の選択肢として定着しました。三井不動産や三菱地所といった総合デベロッパー、JR東日本、ソフトバンクなど、本業が別にある大手企業も次々とこの市場に参入しています。
この記事では、コワーキング・シェアオフィス業界の主要プレイヤーをカオスマップとして整理し、市場規模、大手が参入する理由、今後の展望を公開データからまとめます。あわせて、時間貸しの会議室やワークブースを運営するレンタルスペース事業者にとって、この流れが何を意味するのかも考えます。
なお、この記事では、賃貸借契約ではなく施設の利用契約で使うオフィス(レンタルオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースなど)をまとめて「フレキシブルオフィス」と呼びます。
この記事の要点
- フレキシブルオフィスは東京23区のオフィス全体の約2.6%を占める規模。ただし近年の伸びは緩やかになっている
- プレイヤーは母体の業種と拠点の持ち方によって6つに分かれる
- 大手の参入理由は空室対策だけでなく、企業側の需要の変化と本業資産を生かせる構造の両方
- 今後は拠点数を増やす競争から、用途と立地で選ばれる競争へ移る
市場規模:東京23区のオフィスの約2.6%がフレキシブルオフィスに
フレキシブルオフィスは拠点数・面積ともに増え続けており、東京23区ではオフィス全体の約2.6%を占める規模になりました。ただし、ここ数年は伸びが緩やかになっています。
ザイマックス総研が2026年3月に公表した調査(2025年10〜12月時点)によると、首都圏のフレキシブルオフィスは2,347件でした。このうち東京23区が1,964件、都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)が1,278件で、オフィスが集まる都心への供給が中心です。関西圏は409件で、うち大阪市が242件でした。名古屋市や福岡市などでも数十件以上が確認されており、全国に広がっています。
面積で見ると、東京23区のフレキシブルオフィスは約34.2万坪です。23区のオフィスストック約1,323万坪に対し、約2.6%にあたります。同じ調査の2021年版では、23区内の拠点は762件、面積は19.4万坪、比率は約1.5%でした。約5年で、面積は1.7倍ほどに増えた計算です。
金額ベースの予測もあります。日本能率協会総合研究所は2021年12月、コワーキングやレンタルオフィス、シェアオフィスを含むフレキシブルオフィスの市場が、2026年度に2,300億円規模になる見込みだと発表しました。コロナ禍の最中に出された予測のため、実績との差は今後の検証が必要です。
伸びのペースにも目を向けておきます。CBREによると、東京のフレキシブルオフィスの総面積は2024年末時点で約26.7万坪と、2015年の3.5倍になりました。一方、2024年の前年比の伸びは2.0%にとどまり、緩やかな拡大が続く段階に入っています(調査会社ごとに対象の定義や範囲が異なるため、ザイマックス総研の数値とは一致しません)。三井不動産も2026年7月の事業説明会で、直近5年は成長率が鈍化しているとの認識を示しています。
参照URL https://soken.xymax.co.jp/report/2603-flexible_office_survey_2026.html https://www.kankyo-station.co.jp/trend-news/art/2026/estate1082.html https://forest.toppan.com/expace/columns/tus62y7-ga1/ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000035568.html https://www.cbre.co.jp/properties/column/office/workplace/flexible_office_market_future https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2124982.html
業界カオスマップ:6つのプレイヤー群
コワーキング・シェアオフィス業界のプレイヤーは、母体の業種と拠点の持ち方によって大きく6つに分けられます。拠点数は各社の公表時点のもので、提携先を含むかどうかなど数え方は各社で異なります。
① 総合デベロッパー系
三井不動産の「ワークスタイリング」は、法人契約・会員制のレンタルオフィスとシェアオフィスで、2026年7月時点で約120拠点を展開しています。提携先を含めたネットワークは、公式サイトで全国約600拠点とされています。野村不動産の「H1T(エイチワンティー)」は法人向けの時間貸しサテライト型シェアオフィスで、提携店を含め全国563か所(2026年2月時点、同社発表)に展開し、2026年2月26日からはSTATION WORKとの相互利用も始まっています。東急不動産も、シェアオフィス・コワーキングスペースの「Business-Airport(ビジネスエアポート)」を都内で運営しています。三菱地所は、丸の内・大手町エリアで家具付きサービスオフィス「xLINK」を展開し、後述の日本リージャスもグループに加えています。
② 鉄道系
JR東日本の「STATION WORK」は、駅ナカの個室ブース「STATION BOOTH」を中心に、提携するコワーキング施設や会議室を含めて、2026年3月時点で1,450拠点に達しています。当初は2020年度までに30か所という目標だったものを、何度も上方修正してきました。会員登録をしなくてもSuicaで利用できる設計が特徴です。
③ グローバルブランド系
日本リージャスは、世界最大級のワークスペース事業者IWGのブランドを国内で展開し、2026年6月時点で全国53都市・218拠点を持ちます。2019年に貸会議室大手のティーケーピー(TKP)が買収し、2023年2月からは三菱地所の100%子会社になりました。WeWorkは、2024年に日本法人が民事再生を申し立てたあと、ソフトバンクの100%子会社であるWWJ株式会社が事業を承継し、2026年4月時点で国内8都市・40拠点以上を展開しています。このほか、サーブコープやエグゼクティブセンターといった海外発のサービスオフィスも国内に拠点を持っています。
④ 独立系・フランチャイズ系
いいオフィスは、既存のコワーキングスペースの加盟や空き店舗の活用で店舗網を広げ、2025年3月時点で全国47都道府県に約900拠点を展開しています。スマートロックと自社アプリによる無人運営で、少人数の本部でも多拠点を管理する仕組みをとっています。
⑤ 地域・コンセプト特化型
自治体や地元企業が運営する地方のコワーキングスペース、特定の業種や起業支援に特化した施設などがここに入ります。STATION WORKが福井県や三重県のコワーキング施設と提携したように、大手のネットワークに接続される例も出てきています。
⑥ 時間貸しの会議室やワークブースを運営するレンタルスペース事業者と、その予約を集めるプラットフォーム
個人や中小のホストが運営する小規模な会議室やワークブースも、利用者から見ればフレキシブルオフィスと同じ「外で働く場所」の選択肢です。2024年2月には、野村不動産のH1Tの直営店約3,000スペースがスペースマーケットで予約できるようになるなど、大手のシェアオフィスとレンタルスペースの予約の場が重なり始めています。
【図版:コワーキング・シェアオフィス業界カオスマップ(図版用データは記事末尾)】
| 分類 | 主なプレイヤー(ブランド) | 規模の目安(時点) |
|---|---|---|
| 総合デベロッパー系 | 三井不動産(ワークスタイリング) | 約120拠点、ネットワーク約600拠点(2026年7月) |
| 総合デベロッパー系 | 野村不動産(H1T) | 全国主要都市553か所(公式サイト表記) |
| 総合デベロッパー系 | 三菱地所(xLINK/日本リージャスを傘下) | 下記リージャス参照 |
| 総合デベロッパー系 | 東急不動産(Business-Airport) | 都内展開 |
| 鉄道系 | JR東日本(STATION WORK) | 1,450拠点(2026年3月、提携含む) |
| グローバルブランド系 | 日本リージャス(Regus、SPACES等) | 53都市・218拠点(2026年6月) |
| グローバルブランド系 | WWJ/ソフトバンク(WeWork) | 8都市・40拠点以上(2026年4月) |
| グローバルブランド系 | サーブコープ、エグゼクティブセンター | 要確認 |
| 独立系・FC系 | いいオフィス | 約900拠点(2025年3月) |
| 連携・提携 | CCC(SHARE LOUNGE) | ワークスタイリングと連携 |
| 地域・コンセプト特化型 | 自治体・地元企業の施設、起業支援型など | 個別 |
| レンタルスペース・予約PF | 個人・中小ホストの会議室/ワークブース、スペースマーケット等 | H1T約3,000スペースがスペースマーケットで予約可(2024年2月発表) |
参照URL https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2124982.html https://mf.workstyling.jp/member/ https://www.h1t-web.com/ https://office.tokyu-land.co.jp/flexible-office/ https://www.cbre.co.jp/properties/column/office/trend/agile_office/agile_office_02 https://recruit.jreast.co.jp/business/pj_stationwork/ https://www.regus-office.jp/aboutus/ https://www.regus-office.jp/news/20230201/ https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2026/20260423_01/ https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2024/20240201_03/ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000259.000046744.html https://fundinno.com/projects/335 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000626.000017557.html https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000276.000015560.html
なぜ大手がこぞって参入するのか
大手が参入する理由は、「空室を埋めるため」だけでは説明できません。企業側の需要の変化と、各社が本業で持つ資産を生かせる構造の両方があります。
まず前提として、都心のオフィス市況は逼迫しています。三鬼商事によると、2026年7月時点の東京都心5区の平均空室率は1.95%で、平均賃料は前年同月比11.38%上昇しました。コロナ禍直後のように、空いたフロアを埋める手段としてシェアオフィスを出す、という理由だけでは今の参入の動きを説明しきれません。
企業側の需要が変わったこと
CBREは2025年10月のレポートで、入居工事費の高騰と工期の長期化が進むなか、初期費用を抑えられて契約形態が柔軟なフレキシブルオフィスの利用は今後さらに増える可能性が高いと分析しています。利用目的も、外出先での一時利用だけでなく、本社オフィスとしての利用や他社とのネットワーキングへと広がっているとしています。
出社回帰で会議室が足りなくなっていること
三井不動産は2026年7月の事業説明会で、テレワークの導入は近年微減傾向にある一方、社内の会議室が不足して社外の会議室を使うケースが増えていると説明しました。ザイマックス総研の調査でも、時間貸しの貸会議室型の割合は都心5区で8.8%と高く、自社オフィスで足りないスペースを補う需要が都心ほど強いと分析されています。
デベロッパーにとって「顧客を早い段階から囲い込める」こと
三井不動産は、1人での起業時に使える登記プランから、社員が増えたあとのシェアオフィスやレンタルオフィス、さらに自社の賃貸オフィスまで、事業の成長に合わせて一気通貫で提供できることを強みに挙げています。三菱地所による日本リージャスの買収も、グループの既存拠点とIWGの世界的なネットワークを組み合わせ、事業を強化・拡大する狙いと発表されています。
本業の資産をそのまま生かせること
JR東日本は、改札横や駅ビルといった自社ならではの立地に、Suicaで誰でも使えるワークスペースを置くことで拠点を増やしてきました。ソフトバンクは、WeWork Japanの事業承継にあたり、自社のスマートビルやスマートオフィスなどのDX施策との連携でシナジーを生み出すとしています。
拠点が増えるほど便利になるネットワークの性質
法人会員にとっては、使える拠点が多いほど、営業先の近くや出張先でも利用できます。そのため大手同士でも提携が進んでおり、ワークスタイリングはSTATION WORKやCCCのSHARE LOUNGEなどと連携しています。
編集部の見立てとしては、今の大手参入は「空室対策」から「法人顧客との接点づくり」へと重心が移っていると考えます。フレキシブルオフィスは、スタートアップや大企業の働き方の変化を早くつかめる窓口であり、将来の賃貸オフィスの顧客や自社サービスの利用者を育てる場になっているためです。
参照URL https://www.e-miki.com/rent/tokyo.html https://www.cbre.co.jp/properties/column/office/workplace/flexible_office_market_future https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2124982.html https://www.kankyo-station.co.jp/trend-news/art/2026/estate1082.html https://www.regus-office.jp/news/20230201/ https://recruit.jreast.co.jp/business/pj_stationwork/ https://news.mynavi.jp/techplus/article/20240201-2875153/
今後の展望:量の拡大から「選ばれる」段階へ
今後は、拠点数を増やす競争から、用途と立地で選ばれる競争へ移っていくとみられます。公開されている調査や各社の方針から、4つの方向性が見えてきます。
二極化
矢野経済研究所の「2025 サービス産業白書」は、シェアオフィス・コワーキングスペースについて、今後は大手の多店舗展開型と中小のコンセプチュアル型の二極化が進むとしています。ネットワークの広さで勝負する大手と、特定の用途や地域の利用者に深く刺さる中小に分かれていく流れです。
用途の細分化
ザイマックス総研の調査では、1人用のボックス型の割合が都心5区で26.1%、さいたま市で42.1%でした。大阪市ではオフィス型が50.2%を占めています。都心では会議室、郊外では1人で集中できる個室というように、エリアによって求められる形が違います。三井不動産も、コロナ禍に郊外で増やした1人用個室中心の拠点に加え、会議室を備えた拠点で出社回帰の需要に応えるとしています。
地方と海外への広がり
三井不動産は、高ニーズエリアへの出店に加えて、他社との提携による地方拠点の拡充と海外展開を進める方針です。2026年8月7日には、初の空港内拠点として新千歳空港に開業しました。WeWorkも2026年5月に札幌拠点の開業を予定していると発表していました。
オフィス市況との関係
日本不動産研究所の2026年4月の予測では、東京のオフィスは2026〜2027年の新規供給が過去平均より少なく、2028年以降は大量供給が続く見通しです。編集部の見立てとしては、供給が増える局面では、ビルの付加価値やテナント獲得の手段として、デベロッパーがフレキシブルオフィスをさらに活用する可能性があると考えます。
参照URL https://www.yano.co.jp/market_reports/C66113600 https://www.kankyo-station.co.jp/trend-news/art/2026/estate1082.html https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2124982.html https://mf.workstyling.jp/ https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2026/20260423_01/ https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2026/04/published-document_office-rent-and-vacancy-rate-forecast-for-tokyoosakaand-nagoya_202604.pdf
レンタルスペース運営者への影響
大手の参入は、時間貸しの会議室やワークブースを運営するレンタルスペース事業者にとって、需要の追い風であると同時に、供給が増える競争環境でもあります。自分のスペースがどの需要を取りにいくのかを、改めて整理しておく必要があります。
追い風の面では、出社回帰で社外の会議室を使う企業が増えていること、外出先や郊外で1人用の個室を使う働き方が定着していることが挙げられます。レンタルスペース運営代行のクルトン(METRO MINUTES)が公表している管理物件の売上データでも、ワークブースは2025年に前年同月比で2桁の増加を示す月が多く、2026年3月時点でも1ブースあたり月5万円以上の平均売上を保っています。
一方で、同じデータでは、19名以下の小型会議室が2025年を通じて前年割れの月が多く、同社は会議室の掲載数が増えてきていると見ています。会議室は差別化が難しく、エリア選定が最も重要だとも指摘しています。大手のシェアオフィスが15分単位の時間貸しや法人一括請求を整え、予約プラットフォームにも掲載されるようになったいま、駅前の小型会議室は大手と同じ土俵で比べられる場面が増えていくと考えられます。
そのうえで、中小の運営者が取りやすいのは、大手がカバーしにくい立地と用途です。住宅街や郊外の駅など大手の拠点が少ないエリア、20名以上の研修やセミナー、撮影やレッスンなど特定の用途に合わせた設備、夜間や週末の利用などです。矢野経済研究所のいう「コンセプチュアル型」に近い考え方で、誰のどんな利用に向けたスペースかを明確にするほど、大手との比較から外れやすくなります。
もう一つは、近くで働く人や一度利用した人との関係を育てることです。プラットフォームは新しい利用者に見つけてもらう場として欠かせません。そのうえで、Googleマップで「駅名+会議室」と調べた人や、スペースの名前で再び検索した人がそのまま予約できる窓口を持っておくと、リピート利用を取りこぼしにくくなります。
参照URL https://crewtone.jp/contents/trend2025/ https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2124982.html https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000276.000015560.html https://www.yano.co.jp/market_reports/C66113600
まとめ:大手はネットワーク、中小は用途と立地で選ばれる
フレキシブルオフィスは、東京23区のオフィスストックの約2.6%を占めるまでに広がりました。伸びは緩やかになっていますが、デベロッパー、鉄道会社、通信会社、グローバルブランド、独立系が入り混じり、提携やM&Aを通じて業界の形が変わり続けています。
大手が参入する背景には、入居工事費の高騰や出社回帰による会議室不足といった企業側の変化と、立地や顧客基盤といった本業の資産を生かせる構造があります。今後は、大手のネットワーク型と、中小の用途・地域特化型に分かれていく流れが強まるとみられます。時間貸しのスペースを運営する事業者にとっては、大手と同じ土俵で比べられる領域と、大手が届きにくい領域を見極めることが、次の打ち手を考える出発点になります。
用途と立地で選ばれるスペースほど、近くで働く人やリピーターからの予約が大切になります。upnow(アップナウ)は、Googleマップ検索や指名検索、SNSから来たお客さまの予約を受け付ける自社予約サイトを、初期費用・月額費用0円で作れるサービスです(サイト利用料や決済手数料などは別途かかります)。プラットフォームでの集客と組み合わせて、予約の入口を広げられます。会議室やワークブースの運営づくりを支えます。

