レンタルスペース業界の市場規模と主要プレイヤー|展望と商機

文・編集:upnow media編集部 | 編集方針

駅ナカの小さな区画、テナントが抜けたビルのワンフロア、建て替えまで数年ある社宅。こうした遊休資産の使い道として、時間単位で貸し出すレンタルスペースを検討する法人が増えています。

一方で、レンタルスペース業界には公的な統計が少なく、市場の大きさや、どんな事業者が何で稼いでいるのかが見えにくい業界でもあります。この記事では、公開されている統計と各社の開示資料をもとに、市場規模の正しい読み方、業界を構成する6つのビジネスと主要プレイヤー、需要の変化、今後の展望を整理します。そのうえで、遊休資産を持つ法人にとってのビジネスチャンスと、参入前に確認したいことをまとめます。

この記事の要点

  • レンタルスペースだけを対象にした公的な市場統計はない。よく引用される数字には民泊などが含まれる
  • 業界はプラットフォーム、運営事業者、運営代行、予約・鍵・清掃などの周辺サービスを含む6つのビジネスで構成される
  • 需要は全体として広がっているが、その中身は用途によって明暗が分かれる
  • 今後は用途間の差の拡大、事業者の再編と垂直統合、運営の無人化の3つが同時に進む

レンタルスペースの市場規模は「統計の読み方」から始める

レンタルスペースだけを対象にした公的な市場統計は、現時点では公表されていません。よく引用される数字には民泊などが含まれているため、そのまま使うと市場を大きく見誤ります。

最も近い統計は、情報通信総合研究所とシェアリングエコノミー協会の共同調査です。2025年1月公表の調査では、スペースのシェア市場は2024年度に5,516億円と推計されています。2022年度の3,797億円から大きく伸びた数字です。

ただし、この「スペース」には、Airbnbなどの民泊と、駐車場、会議室、イベントスペースなどがまとめて含まれています。同調査は、全体の増加要因としてコロナ禍で急減した民泊の回復を挙げています。つまり、5,516億円はレンタルスペースの市場規模ではなく、2022年度からの伸びもレンタルスペースの成長率とは言えません。なお、この市場規模は提供者と利用者の間の取引金額で、プラットフォーム事業者の売上ではない点にも注意が必要です。

貸会議室に限った統計としては、矢野経済研究所の調査があります。2018年の貸会議室市場は事業者売上高ベースで698億円、前年比13.7%増でした。ただし、公開されている数値は2018年時点のもので、その後のコロナ禍と回復を反映していません。

そのため、現在の業界の実態をつかむには、市場全体の推計値よりも、主要プレイヤーの開示数値と、運営現場の売上データを組み合わせて見るほうが確実です。次の章から、その順で整理します。

参照URL https://sharing-economy.jp/ja/wp-content/uploads/2025/01/5e598d497774294c71ceaef4bbc90d29.pdf https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2339

レンタルスペース業界を構成する6つのビジネスと主要プレイヤー

レンタルスペース業界は、集客を担うプラットフォーム、自ら拠点を持つ運営事業者、運営を請け負う事業者、そして予約・鍵・清掃などを支える周辺サービスで成り立っています。ここでは6つに分けて、それぞれの主要プレイヤーを紹介します。

1つ目は、スペースを探す利用者と貸したい事業者をつなぐマッチングプラットフォームです。国内ではinstabaseとスペースマーケットが代表的な存在です。instabaseは株式会社Rebaseが運営し、公式サイトでは全国58,000件以上のスペースが掲載されていると案内しています(2026年11月時点)。同社の2026年3月期の売上高は21.81億円で、前期比13.2%増でした。スペースマーケットは2025年12月期に、全社総取扱高が73億9,600万円(前期比23.1%増)、利用スペース数が13.1万スペース(同14.9%増)でした。いずれも掲載自体は無料で、予約が成立したときに手数料がかかる成果報酬型が基本です。

2つ目は、自ら物件を借りて会議室や宴会場として貸し出す大型貸会議室・フレキシブルオフィスの事業者です。最大手のティーケーピーは、2026年2月末時点で直営229施設、契約面積約11万坪を展開し、顧客基盤は3万社に上ります。不動産オーナーから遊休不動産をまとめて仕入れ、会議室などに再生して法人に小口で販売するモデルです。2026年2月期の連結売上高は1,143億円で、ホテル・宿泊研修事業などを含む数字です。

3つ目は、スペースの企画開発や運営を請け負う運営代行です。物件オーナーに代わって内装、掲載、予約対応、清掃手配までを担います。クルトンは全国で900以上のレンタルスペースを運営代行しており、電鉄会社や不動産管理会社との取引実績を公表しています。この領域では再編が進んでおり、スペースマーケットは2025年4月にクルトンを含む3社をグループに加えました。

4つ目は、1人用の個室で時間貸しをするワークブースです。駅や商業施設の小さな区画でも設置できるのが特徴です。JR東日本グループのSTATION WORKは、2019年に東京駅など4駅から始まり、2026年3月時点で拠点数が1,450カ所に達しています。防音個室ブースの製品では、ブイキューブのテレキューブが2025年12月期末時点で累計設置台数約40,000台に達しています。こちらはオフィス内への設置が中心で、時間貸しに使われるのはその一部です。

5つ目は、予約や施設運営を支えるシステムです。プラットフォーム以外から予約を受ける自社予約システムや、公共施設向けの予約管理システムがここに入ります。公共施設向けでは、スペースマーケットの「Spacepad」が、2024年10月時点で全国16の自治体に導入されています。予約システムとスマートロックやキャッシュレス決済を連携させ、公民館などの管理を省人化する取り組みです。

6つ目は、スマートロック、防犯カメラ、清掃、問い合わせ対応などの周辺インフラです。無人で運営するレンタルスペースでは欠かせない領域ですが、レンタルスペース向けに限ったシェアを示す公的データは見当たりません。事業者の多くは中小規模で、地域ごとに分散しているのが実情です。

参照URL https://www.instabase.jp/ https://finance.yahoo.co.jp/quote/5138.T/financials https://finance.biggo.jp/news/jpx_tdnet_140120260331594348 https://diamond.jp/zai/articles/-/1067870 https://pdf.irpocket.com/C3479/nX8G/pHS8/prWU.pdf https://crewtone.jp/contents/trend2025/ https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20251114/20251114503646.pdf https://recruit.jreast.co.jp/business/pj_stationwork/ https://jp.vcube.com/news/release/20241107-1600.html https://spacemarket.co.jp/news/2024/10/30/spacepad_usecases/

データで見る需要の変化:用途によって明暗が分かれる

レンタルスペースの需要は全体として広がっていますが、その中身は用途によって大きく異なります。参入を検討する際は、業界全体の成長よりも、用途ごとの動きを見ることが大切です。

まず、使われ方そのものが多様になっています。スペースマーケットは、会議やイベントに加え、撮影、配信、レッスン、コミュニティ活動などの利用が広がっていると開示しています。2025年12月期第1四半期には、撮影スタジオやレンタルジムなど少人数向けのスペースが増えたことで、利用スペースあたりの月間取扱高が前年同期比2.4%減となりました。スペースの数は増える一方、1スペースあたりの規模は小さくなる方向にあります。

用途別の売上の動きは、運営現場のデータから読み取れます。クルトンが管理スペースの一部を集計して毎月公表しているデータでは、2026年3月のパーティースペースの売上は前年同月比28%増でした。ただし、前月の2月は過去最大の30%減で、月ごとの振れ幅が大きい用途です。

会議室は、規模によって傾向が分かれています。19名以下の小型会議室は2025年を通じて前年割れの月が多く、同社は会議室の掲載数が増えていることを要因の一つに挙げています。20名以上の大型会議室については、供給が急に増えにくく、地域で強い物件は安定していると分析しています(2025年10月の公表時点)。2026年に入ってからは大型会議室も前年割れが続いており、法人の会議室予算の縮小が影響している可能性にも触れています。

ワークブースは、2026年3月の売上が前年同月比2.3%減だったものの、全国平均で1ブースあたり月5万円以上の売上を維持しています。1平方メートルほどの面積でこの売上を生んでいる点は、小さな区画を持つ法人にとって注目に値します。

なお、これらは1社の管理スペースの集計であり、業界全体の平均ではありません。それでも、用途ごとに需要の性質が違うことは、参入する用途を選ぶうえで重要な判断材料になります。

参照URL https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20251114/20251114503646.pdf https://note.com/fisco_jp/n/n58301361effe https://crewtone.jp/contents/trend2025/

今後の展望:業界で進む3つの構造変化

今後のレンタルスペース業界では、供給の増加による用途間の差の拡大、事業者の再編と垂直統合、運営の無人化という3つの変化が同時に進むと考えられます。

1つ目は、供給の増加です。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、2023年10月時点の空き家は900万2000戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高でした。オフィスや店舗の空室も含め、時間貸しに転用できる物件は今後も生まれ続けます。差別化しにくい小型の会議室などでは、価格による競争が続きやすくなります。反対に、設備や立地で代わりが利きにくい用途は、価値を保ちやすいと見られます。

2つ目は、再編と垂直統合です。スペースマーケットは、予約・集客から運営・管理・IoT連携までを一体で提供する方針を掲げ、2030年9月期に売上高100億円を目標としています。2025年には運営代行会社などをM&Aでグループに加えました。ティーケーピーも、M&Aや業務提携による基盤強化を進めています。集客から運営までを一つのグループで担う動きは、今後さらに広がる可能性があります。

3つ目は、無人化・省人化です。レンタルスペースは、無人で運営するモデルが一般化し、運営の効率化を図りつつ設備の品質が差別化の要素になっています。人手の確保も年々難しくなっています。東京労働局の資料では、2026年1月時点の東京の清掃従事者(常用的パート)の有効求人倍率は2.52倍でした。スマートロックによる鍵の受け渡しや、清掃の外部委託を前提にした運営設計が、今後の標準になっていきます。

参照URL https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf https://www.s-housing.jp/archives/369314 https://finance.biggo.jp/news/jpx_tdnet_140120260331594348 https://diamond.jp/zai/articles/-/1067870 https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20251114/20251114503646.pdf https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/002570962.pdf

遊休資産を持つ法人にとっての4つのビジネスチャンス

ここまでのデータから、遊休資産を持つ法人には、資産の形に合わせて選べる4つの機会があると考えられます。共通するのは、資産の特徴と需要の性質を合わせることです。

駅や商業施設の小さな区画をワークブースとして活かす

1平方メートル前後の区画は、店舗やオフィスとして貸すには狭すぎます。一方、ワークブースであれば、先に見たように1ブースで月5万円以上の売上を上げている例があります。駅ナカのワークスペースが1,450拠点まで広がっていることも、移動の合間に使える場所への需要を示しています。

空室のフロアを中・大型の会議室として貸し出す

20名以上の会議室は、小型の会議室に比べて供給が急に増えにくく、地域で強い物件は安定しやすいとされています。ビジネス街にあり、法人の研修やセミナーに使える広さを持つ空室は、この用途と相性がよい資産です。ただし法人需要は予算の影響を受けやすいため、周辺の競合状況と価格帯を確認したうえで判断します。

建て替えや再開発までの期間を活用する

数年後に取り壊す予定の建物では、内装に大きな費用をかける用途は回収が難しくなります。パーティーや撮影など、家具や備品の工夫で成り立つ用途を選び、初期費用を抑えて回収期間を契約や計画の残り期間に収めることが基本の考え方です。

自社のブランドと立地を集客に活かす

鉄道会社や大手不動産会社の物件は、駅名やビル名で検索されやすく、Googleマップ上でも見つけてもらいやすいという強みがあります。プラットフォームは、スペースを知らない利用者に見つけてもらう場として欠かせません。そのうえで、駅名やビル名で調べた人、テナントや近隣の企業、一度利用した人がそのまま予約できる窓口を用意しておくと、予約の機会を広げられます。instabaseの公式サイトでも、東急のルービーと連携した空きスペース活用の相談窓口が案内されており、不動産を持つ企業とプラットフォームが組む形も広がっています。

参照URL https://crewtone.jp/contents/trend2025/ https://recruit.jreast.co.jp/business/pj_stationwork/ https://www.instabase.jp/

参入前に法人が確認したい4つのこと

法人がレンタルスペースに参入するときは、用途、収支、運営体制、契約と届出の4点を、物件ごとに事前に確認しておくことが大切です。

1点目は、用途と需要の確認です。周辺で同じ用途のスペースがどの価格帯で、どの程度予約が入っているかを、予約サイトで調べます。前章で見たように、用途によって需要の安定性は大きく異なります。

2点目は、損益分岐となる稼働率の計算です。家賃相当額や光熱費などの固定費と、手数料や清掃費などの変動費を分け、何割稼働すれば黒字になるかを出します。自社保有の物件であっても、機会費用として本来得られる賃料を置いて比べると、判断がぶれにくくなります。

3点目は、運営体制の設計です。予約対応、鍵の受け渡し、清掃、トラブル対応を、自社で担うか、運営代行や周辺サービスに委託するかを決めます。無人運営を前提にするなら、スマートロックと清掃の委託先を先に固めておくと、開業後の手戻りを防げます。

4点目は、契約と届出の確認です。借りている物件を時間単位で第三者に貸す場合は、民法第612条の転貸にあたる可能性があるため、所有者の承諾を書面で得ておきます。また東京消防庁は、建物を新たに使用する場合などに、使用開始の7日前までに防火対象物使用開始届を出す必要があると案内しています。運用は地域によって異なる場合があるため、管轄の消防署に確認してください。飲食の提供や宿泊を伴う場合は別の許可が必要になることがあるため、判断に迷うときは自治体の窓口や専門家に確認することをおすすめします。

参照URL https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouka02.html

まとめ:市場の数字より、用途ごとの需要と運営の設計を見る

レンタルスペースだけを対象にした公的な市場統計はなく、よく引用されるスペースシェア市場5,516億円(2024年度)には民泊などが含まれます。業界の実態は、instabaseとスペースマーケットのプラットフォーム、ティーケーピーをはじめとする大型貸会議室、運営代行、ワークブース、予約システム、周辺インフラの組み合わせで見るほうが正確です。

需要は広がっていますが、パーティーは変動が大きく、小型会議室は供給増の影響を受け、ワークブースは小さな面積で安定した売上を生むなど、用途によって性質が異なります。今後は供給の増加、再編と垂直統合、無人化が同時に進むと見られます。遊休資産を持つ法人にとっては、資産の形に合う用途を選び、損益分岐と運営体制を先に設計することが、参入を成功させる前提になります。

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