レンタルスペース開業の初期費用と収支|内訳と試算

文・編集:upnow media編集部 | 編集方針

レンタルスペースは、飲食店などに比べて少ない資金で始めやすい事業といわれます。とはいえ、実際にいくら用意すればよいのか、何か月で元が取れるのかは、物件や用途によって大きく変わります。

この記事では、これからレンタルスペースを始める方に向けて、初期費用の内訳、毎月かかる運営費、収支シミュレーションの作り方、開業前に確認したい契約と届出までを整理します。金額は公開されている事例や試算をもとにした目安です。最後に、自分の物件で損益分岐となる稼働率と回収期間を計算できるよう、手順を示します。

この記事の要点

  • 開業に必要なお金は「初期費用+運転資金」で考える。総額を大きく左右するのは物件取得費と内装費
  • 初期費用は物件取得・内装・家具家電・設備・備品・届出・運転資金の7つに分けると漏れを防げる
  • 毎月の費用は固定費と変動費に分けると、何時間貸せば赤字にならないかが見える
  • 1時間貸すごとに手元に残る額を先に出し、それで固定費を割って損益分岐となる稼働率を求める

開業費用は「初期費用+運転資金」で考える

開業に必要なお金は、スペースを整えるための初期費用と、売上が安定するまでの運転資金に分けて考えます。総額を大きく左右するのは、物件取得費と内装費です。

公開されている目安には幅があります。レンタルスペースの運営会社スペースモールは、小規模なスペースの初期投資を100万〜200万円程度と紹介しています(2022年3月公開)。開業資金のシミュレーターでは、20〜50平方メートルのイベント・パーティールームを想定した試算で、目安355万円、最低136万円から最大768万円とされています(2026年版)。

このシミュレーターでは、目安額355万円のうち内装工事が130万円で37%、物件取得が90万円で25%を占めています。つまり、内装をほとんど必要としない物件を選べるか、敷金などの物件取得費をどこまで抑えられるかで、必要な資金は数百万円単位で変わります。まず物件の条件を決め、その後に各項目を積み上げるのが現実的な順番です。

参照URL https://spacemole.co.jp/1156/ https://kaigyou.more-andf.jp/cost-simulator/rental-space

初期費用の内訳

初期費用は、物件取得、内装、家具家電、設備、備品、届出、運転資金の7つに分けると漏れを防げます。ここでは先ほどのシミュレーター(中規模のパーティールーム想定、2026年版)の目安額を軸に、それぞれの考え方を説明します。

1つ目は物件取得費です。敷金、礼金、仲介手数料、保証会社の保証料、前払い家賃などが含まれ、目安は90万円です。事業用の物件は住宅より敷金が多めに設定されることがあるため、家賃の何か月分がかかるかを物件ごとに確認します。

2つ目は内装工事費で、目安は130万円です。床や壁紙の張り替え、照明の変更、防音対策などが該当します。前の入居者の内装が残る居抜き物件や、すでにきれいな住居用物件を使える場合は、大きく抑えられる項目です。

3つ目は家具家電で、目安は40万円、幅は10万〜80万円です。スペースモールの事例では、水道橋のスペースで家具家電に86.8万円をかけています。ソファやテーブル、テレビ、プロジェクター、冷蔵庫など、想定する用途で必要なものが変わります。

4つ目は設備・機器で、目安は18万円です。内訳の例として、スマートロックが8万円(5万〜20万円)、防犯カメラが6万円(3万〜15万円)、Wi-Fi環境が4万円(2万〜8万円)と試算されています。スマートロックは、利用者ごとの鍵の受け渡しや清掃スタッフの出入りを無人で管理するための設備で、運営の手間に直結します。

5つ目は備品・消耗品で、目安は40万円です。食器、ゲーム機、清掃用具、ごみ袋、ハンドソープなどが該当します。6つ目の資格・許認可は目安3万円で、用途によっては届出や許可に費用や書類の準備が必要です。

7つ目が運転資金で、目安は60万円です。開業直後は口コミやレビューが少なく、予約が安定するまで時間がかかります。家賃などの固定費の3〜6か月分を手元に残しておくと、立ち上がりの時期に慌てずに済みます。

参照URL https://kaigyou.more-andf.jp/cost-simulator/rental-space https://spacemole.co.jp/1156/

毎月かかる運営費:固定費と変動費を分ける

毎月の費用は、予約の有無にかかわらず出ていく固定費と、予約が入るほど増える変動費に分けて整理します。この区別をしておくと、何時間貸せば赤字にならないかを計算できるようになります。

固定費の中心は家賃です。これに電気・水道・ガスの基本料金、インターネット回線、防犯カメラやスマートロックの月額料金、保険料などが加わります。備品の補充費について、スペースマーケットのホスト向け記事では、部屋の広さや利用頻度によるとしたうえで毎月3,000円前後が目安とされています(2022年1月更新)。

変動費の代表は、清掃費と、予約経路ごとの手数料です。清掃代行を使う場合、同じ記事では30平方メートルの部屋で1回あたり2,000円前後が目安とされています。清掃費は予約1件ごとにかかるため、短時間で単価の低い予約が多いほど売上に占める割合が大きくなります。

手数料は、予約を受ける経路によって仕組みが異なります。たとえば2026年9月時点の各社公開情報では、スペースマーケットは時間貸しの成約手数料を利用料金(税抜)の30%、instabaseは時間・人数単位のプランで35%、1日単位のプランで20%としています。いずれも掲載自体は無料で、予約が成立したときにだけ手数料がかかる成果報酬型です。自社サイトなどで直接予約を受ける場合も、決済手数料やシステムの利用料がかかります。収支計画では、経路ごとの予約の割合を見込み、平均的な手数料率として置いておくと計算しやすくなります。

参照URL https://academy.spacemarket.com/rentalspacehost-todo/ https://academy.spacemarket.com/earnings/ https://support.instabase.jp/hc/ja/articles/360026163271

収支シミュレーションの作り方

収支は、1時間貸すごとに手元に残る額を先に出し、それで固定費を割って損益分岐となる稼働率を求めます。順番は、前提を置く、1時間あたりの残る額を出す、損益分岐の稼働率を出す、稼働率ごとの利益と回収期間を比べる、の4ステップです。

ここからは、手順をわかりやすくするための仮の試算です。実在のスペースの数値ではありません。

  • 前提(25平方メートル前後のパーティースペースを想定)
    • 固定費(家賃12万円+光熱費・通信費・備品・保険など2万円) 月14万円
    • 1時間あたりの平均単価 2,500円、1件あたりの平均利用時間 4時間
    • 販売できる時間 1日15時間 × 30日 = 月450時間
    • 平均手数料率 30%
    • 清掃代行費 1件2,000円 = 1時間あたり500円
    • 初期費用(物件取得60万円+内装50万円+家具家電40万円+設備18万円+備品20万円) 188万円
    • 別に用意する運転資金(固定費3か月分) 42万円

ステップ1 1時間貸すと手元に残る額

2,500円 −(手数料750円 + 清掃費500円)= 1,250円

ステップ2 損益分岐となる稼働率

固定費140,000円 ÷ 1,250円 = 112時間 112時間 ÷ 450時間 = 約25%

ステップ3 稼働率ごとの月の利益と回収期間

稼働率売れる時間売上手元に残る額月の利益188万円の
回収期間
25%112時間280,000円140,000円0円回収できない
30%135時間337,500円168,750円28,750円約65か月
40%180時間450,000円225,000円85,000円約22か月
50%225時間562,500円281,250円141,250円約14か月

手元に残る額は「売れる時間 × 1,250円」、月の利益は「手元に残る額 − 固定費14万円」、回収期間は「188万円 ÷ 月の利益」で計算しています。稼働率が30%から40%に上がるだけで、回収期間は65か月から22か月へと3分の1になります。逆に言えば、開業前の稼働率の見込みを甘く置くと、計画は大きく外れます。

この試算から、開業前に確認したいことが3つ見えてきます。1つ目は、想定する稼働率が損益分岐の稼働率を十分に上回っているかです。スペースモールは、固定費の2倍以上の売上を一つの目安として挙げています。2つ目は、回収期間が物件の賃貸借契約の期間に収まっているかです。一般的な2〜3年の契約で回収しきれない計画は、見直しが必要です。3つ目は、清掃費や手数料といった変動費の比率です。単価や1件あたりの利用時間の設定によって、手元に残る金額は大きく変わります。

参照URL https://spacemole.co.jp/1156/ https://academy.spacemarket.com/rentalspacehost-todo/

開業前に確認したい契約と届出

費用の計算とあわせて、その物件でレンタルスペースを営めるかを契約と届出の面から確認します。ここで問題が見つかると、支払った初期費用が無駄になるおそれがあるため、物件の契約前に確認するのが原則です。

最初に確認したいのが、物件オーナーの承諾です。借りた物件を第三者に時間単位で貸すことは、転貸(又貸し)にあたる可能性があります。民法第612条は、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借物を転貸することはできないと定めています。レンタルスペースとして使うことを伝え、承諾を書面で残しておきましょう。

次に、消防への届出です。レンタルスペースを始めること自体に届出が義務づけられているわけではなく、必要かどうかは建物の使い方と工事の有無で決まります。東京消防庁は、火災予防条例にもとづき、建物やその一部を新たに使用する場合、間取りや天井高さを変える改装工事をした場合、テナントが入れ替わった場合に、使用を始める7日前までに管轄の消防署へ防火対象物使用開始届を出すよう案内しています。また、間仕切りの変更を伴う工事をするときは、着工の7日前までに工事等計画届が必要です。室内にワークブース(個室ブース)を設置する場合は、これに該当することがあります。条例は自治体ごとに定められており、住居として使われていた部屋をそのまま貸す場合など、実際の取り扱いは物件と所轄の消防署によって異なります。判断に迷う場合は、物件を契約する前に所轄の消防署へ確認してください。

用途によっては、ほかの許可が必要になることもあります。たとえば運営者が飲食物を提供する場合は保健所の営業許可が必要になり得ますし、宿泊を伴う貸し出しは旅館業法や住宅宿泊事業法の対象になります。どの法律が関わるかは用途と物件の条件で変わるため、判断に迷う場合は、自治体の窓口や行政書士などの専門家に確認することをおすすめします。

参照URL https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouka02.html https://biz.moneyforward.com/establish/basic/55461/

初期費用を抑え、回収を早める工夫

回収期間を短くする方法は、初期費用を減らすことと、月の利益を増やすことの2つです。開業前の段階で打てる手は、意外と多くあります。

初期費用の面では、内装にほとんど手を入れずに済む物件を選ぶことが最も効果的です。先ほどの試算でも、内装費の差は回収期間に直接響きます。家具家電は、写真映えする主役の家具に予算を寄せ、それ以外は中古品やリースを組み合わせる方法があります。清掃も、最初から定期契約を結ばず、予約数が読めるまでは単発で頼める依頼先を使うと、固定費を増やさずに始められます。

月の利益の面では、予約の入り口を複数持つことが大切です。プラットフォームは、スペースを知らない利用者に見つけてもらうための集客の場として頼りになります。一方で、スペースの近くにいる人がGoogleマップで見つけたり、一度利用した人がスペースの名前で検索したり、SNSで知ったりすることもあります。こうした経路から来た人がそのまま予約できる窓口を用意しておくと、プラットフォームでの集客と組み合わせて、予約の機会を広げられます。

参照URL https://kaigyou.more-andf.jp/cost-simulator/rental-space

まとめ:損益分岐の稼働率から逆算して開業を決める

レンタルスペースの開業費用は、小規模な事例で100万〜200万円程度、中規模のパーティールームの試算で300万円台が一つの目安です。ただし金額の幅は物件取得費と内装費で大きく変わるため、まず物件の条件を決めてから各項目を積み上げることが大切です。

収支計画では、固定費と変動費を分け、損益分岐となる稼働率を出したうえで、想定する稼働率での回収期間が契約期間に収まるかを確認しましょう。あわせて、物件オーナーの承諾と消防への届出を物件の契約前に確認しておくと、開業後の手戻りを防げます。

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