レンタルスペースの寿命は2年。1年以内に回収し、2年でリニューアルする運営の原則

文・編集:upnow media編集部 | 編集方針

「レンタルスペースは不労所得ではありません。少労所得。物によっては多労です」。そう笑いながら語るのは、湘南を拠点に活動するホストのナントさんです。2017年に民泊からスタートし、レンタルスペースに展開してからは、サロン、パーティー、貸会議室、撮影スタジオ、さらには「何もしない部屋」まで、さまざまな用途を試してきました。現在は約10拠点を運営し、運営者同士がつながるコミュニティ「レンスペ倶楽部」(約260人)を主宰しています。

検索すれば「レンタルスペースは儲からない」「危ない」という言葉も出てくるこの業界で、10年近く第一線に居続けられたのはなぜか。取材で返ってきた答えは、派手な成功法則ではなく、「寿命2年」「1年以内に回収」というシビアな原則と、トラブルや失敗を織り込んだ淡々とした運営哲学でした。これから始める人にも、すでに運営している人にも持ち帰れる話だったので、ほぼそのままお届けします。(取材日:2026年10月13日)

取材対象

ナントさんレンタルスペース運営者・「レンスペ倶楽部」主宰/パートナーのカナルさんと二人で運営

2017年に湘南で民泊からスタートし、レンタルスペース運営へ。民泊歴9年、無人のレンタルスペース運営歴8年。サロン、パーティースペース、貸会議室、撮影スタジオ、「何もしない部屋」まで、これまでに幅広い用途を手がけ、現在は約10拠点を運営する。大手予約プラットフォームでのベストホスト受賞は2回。運営者同士がつながるコミュニティ「レンスペ倶楽部」を主宰し、noteでの情報発信や個別相談も行っている。

パートナーのカナルさんとの二人三脚で、物件探しから運営までを分担。ふたりの名前を合わせて「なんとかなる」。夫婦で取り組むホストは多くないと、ナントさん自身も語る。

この記事の要点

  • レンタルスペースが同じ状態で稼げる寿命は約2年。初期費用は1年以内の回収が原則
  • パーティーはトラブル耐性が必要。撮影スタジオ・サロンは個人が戦いやすい
  • ブームはゼロから作らず「乗る側」でいく
  • 運営代行や高額フランチャイズは、委託範囲・料金・実績を契約前に確認

民泊から始まり、気づけば用途を次々と試していた

ナントさんのスタートは2017年、民泊が盛り上がっていた時代の湘南でした。開始直後に地元の民泊仲間とつながり、自宅に20人以上が集まる交流会を開いたところ「家からクレームを食らいました。うるさいって」と笑います。孤独になりがちな個人ホストにとって、横のつながりが最初からあったことが、その後のコミュニティ運営の原体験になっています。

レンタルスペースへの展開は自然な流れでした。「民泊との違いは、1日で貸すか時間で貸すかという話」。そこからサロン、パーティースペース、貸会議室、撮影スタジオと用途を広げていきます。企画の起点はいつもSNSです。「SNSを見ていて、こういった需要があるかなと思うパターンが多いですね。撮影スタジオも、カメラマンとモデルさんが『高いスタジオだと予約できない』と困っているのを見て、アマチュア向けを作ろうと始めました」。コスプレがブームになればコスプレ向けを、商品撮影に困っている人を見れば商品撮影向けを作る。需要を見つけては箱に変換する、その繰り返しでした。

一つの用途に特化するホストが多いなかで、幅広い用途を実際に運営してきた経験は、のちに大きな武器になります。「いろいろやっている中で『自分には何が向いていますかね』という相談が来るようになった。そこが武器だったのかなと思います」。相談対応やコンサルティングの依頼が増え、同時進行3名までと決めて受けきれない分は教材にまとめる。需要に応じて形を変えてきた結果が、今の活動スタイルです。

レンタルスペースの寿命は2年。だから1年以内に回収する

取材でもっとも印象的だったのが、スペースの「寿命」の話です。かつては渋谷の会議室が家賃10万円で売上35万円、という時代もありました。その感覚で今も語られることがありますが、ナントさんの見立ては明快です。

「自分が作ったレンタルスペースが、同じ状態のまま売上を続けられるのは、多分2年くらい。だから2年経ったらリニューアルするか、売却するかをやっています」

この2年という寿命から逆算して、投資の原則も決まっています。「僕は基本的に、絶対に1年以内で回収して、もう1年分をドカッと稼いで、2年でまたリニューアルする、という感じでやっています。回収に2年かかってしまうと、多分きついと思います」。初期費用のかけ方は、開業時の収支計画の立て方そのものです。この考え方はレンタルスペース開業の初期費用と収支|内訳と試算で紹介している試算にもそのまま使えます。

なぜ2年で飽きられるのか。業界の構造として、プラットフォーム側も毎年新しい利用用途を打ち出し続けており、利用者の関心は常に新しい使い方へ移っていくからです。「ちょっと前の用途が飽きられても、また新しい用途でレンタルスペースは盛り上がっている。だから、ずっと同じスペースでずっと同じ金額が稼げると思っていると、それは違うよ、という話です」

例外は「最初から作り込んだ」スペース。プロ向けになれば2年を超える

一方で、ナントさんの運営スペースには2年を超えて稼ぎ続けている例外もあります。内装を最初から徹底的に作り込んだ撮影スタジオです。「あそこに関しては、最初からほぼ完成させてしまった。利用はほぼ法人で、商品撮影やショートドラマ、YouTubeドラマなどの用途でリピートしてもらえています」。料金は1時間1万円前後。個人向けではなくプロ向けの価格帯です。

「そこまでのスタジオになると、競合はプロの撮影スタジオだけになる。同じようなところは増えづらいんです。toC(個人向け)ではなくtoB(法人向け)になれば、2年以上は全然いける」。寿命2年の原則は、裏を返せば「2年で飽きる個人需要に乗っている限り」の話。作り込みで法人のリピートを獲得できれば、寿命そのものを延ばせるというわけです。ただしその分、初期投資は重くなります。1年以内に回収できる見込みが立つかどうかが、やはり判断の軸になります。

トラブルを受け入れられるか。用途選びは性格で決まる

用途ごとの向き不向きを聞くと、収益性よりも先に「精神的な負担」の話になりました。ナントさんはかつてパーティースペースを複数運営していましたが、現在は1件まで縮小しています。理由はトラブルです。テレビを割られる、電気コンロの上にたこ焼き器を置かれる、ベランダが嘔吐で汚される、近隣からクレームが入り警察を呼ばれる。「ただの憂さ晴らしの捌け口みたいに荒らされて、近隣からクレームを食らって、警察が呼ばれて。俺は何をやっているんだ、という気持ちになってしまうんですよね」

近年盛り上がっているイベントスペース(パーティーと貸会議室と大箱のいいとこ取りのような業態)についても、「パーティーの上位概念だと考えているので、僕はやらない」ときっぱり。「トラブルを受け入れられるだけのハートの強さがある人なら、おすすめします」と、向き不向きを性格の問題として語ります。

対照的なのが撮影スタジオとレンタルサロンです。「撮影スタジオは、機材の破損はあるけれど、部屋自体を破壊されることはない。パーティーと比べたらトラブルは全然少ないです」。レンタルサロンに至っては、利用者が施術者とお客さんの基本2人のため、「騒音クレームを食らったケースを聞いたことがない」。会議室やワークブースは法人プレイヤーの参入が増えていますが、撮影・パーティー・サロンは今も個人が十分に戦える領域だといいます。サロン運営の実態はリピーター4人で回すレンタルサロン運営の記事で詳しく聞いています。

ゼロからブームは作れない。「乗る側」でいく

さまざまな用途を試してきたナントさんにも、はっきりした失敗談があります。デジタルデトックスの流行を見て企画した「何もしない部屋」です。ホスト仲間からの評判は上々だったものの、「いざ出してみたら、ユーザー側の需要はそこまでではなかった」。SNSで「30分何もしないチャレンジ」という企画動画まで作りましたが、「来たコメントは『30分も何もしないなんて無理』。滑りましたね」と振り返ります。

蓋を開けてみれば、利用者の6割はオンライン面談や作業で使っており、一番多い要望は「Wi-Fiが欲しい」。今はWi-Fiを入れて「1人用の個室で自由に過ごせる部屋」へコンセプトを変える準備をしています。企画が外れたら、需要に合わせて素直に直す。ここでも2年を待たないリニューアルです。

この経験から導かれた結論が、今後の方針になっています。「SNSで新たにブームを作るのは、多分相当大変。であれば、今流行っているものを取り入れたほうが早いし、成功確率も高い。ブームは作る側ではなく、乗る側で今後も行こうと思います」

情報収集は「実績」で選ぶ。高額な儲け話には近づかない

これから始める人は、何を頼りに情報収集すればいいのか。ナントさんの答えはシンプルで、「信頼は、やっぱり実績なんじゃないですかね」。大手プラットフォームでの受賞歴、運営年数、そして手がけてきた用途の幅。発信者がどんなスペースを、どれだけの期間、実際に運営してきたのかを確かめることが出発点になります。

その裏側で、ナントさんのZoom相談には深刻なケースも持ち込まれています。「一時期すごく多かったのが、特定の運営代行業者に立ち上げや立て直しをお願いしたのに、何もしてもらえていないという相談。紹介された物件を見せられて『これ、いけますかね』と聞かれて、『絶対にいけません。買っちゃだめですよ』と止めたパターンもあります」。相談全体の半分近くがこうした被害関連だった時期もあるそうです。業界には、初期費用として数十万円を先に振り込ませる高額なフランチャイズやスクールも存在します。運営代行そのものは正しく使えば有効な選択肢ですが、委託範囲・料金・実績を契約前に確かめることが欠かせません。選び方の観点はレンタルスペース運営代行5社を調査にまとめています。

ナントさん自身が教材や相談の価格を抑えているのも、この構図への意識があるからです。「基本的に良心的な値段で。恨まれたくないんで」。持続的に業界に関わり続けるための、本人なりの線引きです。

民泊からの転換ブームにも、冷静なひと言

2026年は都心部で民泊への規制強化が進み、民泊物件をレンタルスペースに転換(コンバート)できないか、という相談がナントさんのもとにも届いています。ただ、答えは慎重です。「民泊でいけている部屋が、そのままレンタルスペースでいけるわけではない。民泊は駅から離れていてもOKだけど、レンタルスペースで駅から15分は結構きつい。レンタルスペースにしたから絶対に黒字化する、というわけではないよ、という話はしています」

間取りの問題もあります。レンタルスペースにはキッチンや細かい部屋割りは不要で、広いワンフロアのほうが使いやすい。民泊向けの物件構造は、そのままでは活きないことが多いのです。固定費の構造も異なるため、転用を検討する際は一度ゼロベースで収支を引き直す必要があります。詳しくは民泊規制強化とレンタルスペース|時間貸しとの違いと転用の注意点も参考にしてください。

不労所得ではなく「少労所得」。だから続けられる

最後に、これから始める人へのスタンスを聞くと、冒頭の言葉に戻ってきました。「不労所得じゃない、というのはずっと言っていて。少労所得。物によっては多労です」。何もせずに月10万円稼げる、という期待で入ると必ずギャップに苦しむ。小さな労働と工夫を続けられる人にとっては、個人でも十分に戦える事業である。10年の経験を凝縮すると、そういうことのようです。

ナントさんは現在、物件の探し方からオープンまでの流れ、トラブルへの対処法までを文章と3時間超の動画にまとめた「スターターキット」をnoteで販売しているほか、物件探しから立ち上げまでを3か月間伴走する3か月伴走型の個別サポートを近日リリース予定です(同時に受けられるのは3〜4人までの少人数制。詳細はナントさんのnoteをご覧ください)。最新の発信はナントさんのnoteからどうぞ。

参照URL https://note.com/mardoc96

ナントさんへの一問一答

レンタルスペースの寿命はどのくらいですか?

同じ状態のまま売上を維持できるのは約2年です。運営10年目のホスト・ナントさんは、2年を過ぎた時点でリニューアルするか売却するかを判断しています。ただし内装を作り込んで法人のリピート利用を獲得したスタジオは、2年を超えて稼働を続ける例外もあります。

レンタルスペースの初期費用は何年で回収すべきですか?

1年以内が目安です。寿命が約2年のため、回収に2年かかると利益がほとんど残りません。ナントさんは1年以内に初期費用を回収し、残りの1年で利益を取り、2年目にリニューアルする設計を原則にしています。

レンタルスペースはどの用途が始めやすいですか?

撮影スタジオとレンタルサロンです。どちらも部屋の破損や騒音クレームが起きにくく、精神的な負担が小さいためです。パーティースペースやイベントスペースは、備品の破損や近隣クレームへの耐性が求められます。

民泊物件をレンタルスペースに転用すれば黒字になりますか?

なるとは限りません。民泊は駅から離れていても成立しますが、レンタルスペースで駅から徒歩15分は厳しくなります。またキッチンや細かい間取りは不要で広いワンフロアのほうが使いやすいため、民泊向けの物件構造はそのままでは活きないことが多いです。

レンタルスペースは不労所得になりますか?

なりません。ナントさんは「不労所得ではなく少労所得。物によっては多労」と表現しています。何もせずに稼げるという期待で始めるとギャップに苦しむため、小さな手間と工夫を続けられるかどうかが前提になります。

編集後記

取材を通して感じたのは、「寿命2年」という言葉の裏にある前向きさでした。飽きられることを前提に設計するから、1年で回収する規律が生まれ、リニューアルや売却という次の一手が打てる。失敗した企画も淡々と作り直す。レンタルスペースを長く続けている人の強さは、当てる力ではなく、直し続ける力なのだと思います。なお、本記事は編集部の取材に基づくもので、掲載にあたって対価は受け取っていません。ナントさんは当社の予約システム・upnowを利用するホストでもあります。

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upnowは、レンタルスペース運営者向けの自社予約システムです。Googleマップ・指名検索・SNSからスペースを見つけた人の予約の受け皿を、初期費用・月額費用0円(サイト利用料や決済手数料などは別途かかります)で用意できます。リニューアルや用途転換のたびに予約導線を作り直さなくて済むよう、自社の予約ページを一つ持っておきたい方はご検討ください。