家賃が上がった市場で、それでも収支が合うレンタルスペース物件の条件

文・編集:upnow media編集部 | 編集方針

「どんなに家賃が高くても、場所が悪くても、絶対に儲からない物件というのは本当はないと思っているんです。結局、そこにどういう付加価値をつけるかなので」。そう語るのは、民泊・レンタルスペース向けの物件仲介を軸に事業を展開するニューオ株式会社 代表取締役の夏苅良社長です。物件を探す人と貸す人の間に立ち、民泊・旅館業やレンタルスペースとして運営できる物件を紹介してきました。

レンタルスペースという言葉が広く知られるようになった一方で、家賃は上がり、施設は増えました。渋谷で20平米の物件が、以前は家賃10万円以下でも見つかったのに、いまは15万円前後。それでも収支が合う物件はあるのか、あるとすれば何が違うのか。物件探しの入口に立ち、日々オーナーや管理会社と交渉している夏苅社長に、いまの市場で物件を見るときの条件を聞きました。これから1件目を探す人にも、2件目以降を検討している人にも持ち帰れる話だったので、ほぼそのままお届けします。(取材日:2026年10月20日)

取材対象

夏苅 良ニューオ株式会社 代表取締役/民泊・レンタルスペース物件紹介&コミュニティ「ユウカツ」運営

不動産の売買・管理を軸に、民泊・旅館業やレンタルスペースとして運営できる物件の仲介、民泊の運営代行と自社運営(レンタルスペース・民泊)、事業譲渡(M&A)の仲介まで手がける。物件情報とコミュニティを提供する「ユウカツ」を運営し、銀座のオフィスの1フロアに、運営者が集まるラウンジを開設した。

ユウカツ ニューオ株式会社

この記事の要点

  • 物件の許可は取りやすくなった。一方で渋谷20平米の家賃が10万円以下から15万円前後へ上がり、施設も増えて、収支が合う物件は減っている
  • 小さいスペースは用途の特化が前提に。回収期間の期待値は「1〜2年」から「2〜3年」へ
  • 1件目は自分で運営し、売上ゼロでも6か月以上耐えられる家賃の物件を選ぶ
  • 物件ごとに「稼ぐためか、自分も使うためか」を先に決める。売却という出口も現実的になってきた

レンタルスペースは「話が通る」業態になった

物件の利用許可は、以前より取りやすくなっています。夏苅社長によれば、数年前まではレンタルスペースが何かを知らない管理会社が多く、いかがわしい用途を想像されたり、トランクルームと混同されたりすることも珍しくありませんでした。「昔は、レンタルスペースとはこういうもので、と一から説明していました。今は、無人管理になりますがいいですか、と確認するくらいで、いいですよと言ってもらえることが増えた気がします」

変化の背景には、駅や商業施設に置かれたワークブースのように、時間貸しのスペースが街のあちこちで目に触れるようになったことがあります。「ちゃんと運営管理できるなら」という条件付きの承諾も増えてきました。

交渉の仕方にもコツがあります。レンタルスペースとしての利用を断られたとき、ニューオでは粘って押し切るのではなく、用途を変えて提案し直すといいます。「貸会議室や、1人用のワークブースを3つ4つ置くのはどうですか、と提案すると、その用途ならOKと言ってもらえるケースが結構増えてきました」。音が出にくく、少人数で使う静かな用途は、オーナー側の不安を下げやすいということです。断られたら食い下がるのではなく、静かな用途に切り替えて提案し直す。これが今の物件交渉の基本形です。

民泊は不可でもレンタルスペースならよい、というオーナーも増えています。夏苅社長は、民泊の印象は一部の目立つトラブルがSNSで拡散されたことに引っ張られていると見ています。裏を返せば、レンタルスペースも悪い事例が広がれば立場が入れ替わりうるということです。業界全体で運営の質を保つことが、物件の取りやすさにも直結しています。物件の確認手順はレンタルスペースの物件選び|用途・契約・立地の確認手順でまとめています。

それでも、収支が合う物件は減っている

許可は取りやすくなった一方で、事業として成り立つ物件は限られてきました。「OKは出ても、僕らが普段やっているやり方で収支が合う物件は、もしかしたら減っているかもしれません」

最大の理由は家賃の上昇です。夏苅社長の感覚では、以前は渋谷でも20平米で家賃10万円以下の物件を見つけられましたが、今はそれが15万円前後になっているといいます(2026年10月取材時点)。かつては「レンタルスペースとして使える物件」そのものが希少で、見つけられること自体に価値がありました。今は使える物件は出てくるようになったものの、その中で本当に収益が出る物件は絞られています。

もう一つは供給の増加です。民泊や旅館業に比べて参入のハードルが低いぶん、施設は増えやすい。「認知は昔より上がっているけれど、それ以上に施設が増えている。だから1件あたりの売上が少し下がってきていて、売上を上げるために価格を下げる、という価格競争が一部で起きています」

「無人運営だろうが、収支が合わなければみんな撤退する」。コストが小さいことは参入の理由にはなっても、続けられる理由にはなりません。家賃と想定売上の差を、開業前にどこまで厳しく見積もれるかが問われています。試算の組み立て方はレンタルスペース開業の初期費用と収支|内訳と試算が参考になります。

小さい箱は特化、大きい箱は運営力の勝負に

競争が激しくなった結果、勝ち方はスペースの大きさで分かれてきました。小さいスペースについて、夏苅社長の見立てははっきりしています。「昔は何でもできます、というスペースが多かったと思うんですけど、今は撮影用、シネマ専用、レンタルジム、サロンのように、結構特化していないと難しくなってきたのかなと思います」

一方の中箱・大箱は、以前は収支が合わないと敬遠されがちでした。ところが、複数の拠点を運営する事業者が挑戦してみたところ、意外と収支が合う例が出てきています。「渋谷で大箱なら、どれだけ高くてもやる、という人もいますからね」。大きな箱は投資も大きくなりますが、そのぶん運営力のある事業者が差をつけやすい領域になりつつあります。

回収期間の考え方も変わってきました。「昔は代行を入れても1年とか2年で回収できるよね、という感じだったと思います。今は2年から3年くらいの期待値を持って探した方がいい。業界の各社さんと話しても、そういう認識になってきている気がします」。大切なのは、昔の成功例をそのまま当てはめず、今の家賃と競争環境で試算し直すことです。

小さい箱は「何でもできる」より「これに特化」。用途ごとの向き不向きはレンタルスペースの種類と選び方で比較しています。厳しさが増したとはいえ、続けている人は続けています。複数件を運営する人の中には、毎月の収益で1件、2件と少しずつ拠点を増やしている人もいて、夏苅社長の顧客には、運営代行を使いながらも運営の仕組みは自分で組み立て、100室近くを回している人もいるそうです。

1件目は「売上ゼロでも耐えられる家賃」で選ぶ

これから始める人がつまずきやすいポイントを聞くと、夏苅社長は三つを挙げました。

一つ目は現地を見ないことです。運営自体は無人でも、物件を決める前には必ず足を運び、防音性や周辺環境を確かめる必要があります。「閑静な住宅街で、本当はここでヒップホップのダンススタジオをやりたかったのに、となると、利益が出る出ない以前に、運営そのものができなくなる可能性があります」

二つ目は、初期投資の根拠を確かめないことです。最初に300万円、500万円、1,000万円をかけましょうという提案を受けることもありますが、その金額でどれだけの回収を見込んでいるのか、根拠を聞いたうえで判断すべきだといいます。運営代行に任せる場合も同じで、選ぶときの観点はレンタルスペース運営代行5社を調査にまとめています。

三つ目は、最初から家賃の安い物件を選ぶことです。夏苅社長は、1件目はできれば自分で運営した方がいいと考えています。「何をやったらどれだけ大変で、何をやったらどういう予約が入るのか。それが分かっていないと、代行さんの言いなりになってしまうところがあるので」。そのうえで、1件目は運営を学ぶための物件と割り切り、家賃を抑えることを勧めます。

「新宿や渋谷、六本木なら行けそうだと思って家賃15万円くらいの物件を選んで、半年から1年で撤退する。自分でやってうまくいかなかった、という人が一番かわいそうだと思うんです」。少し条件の劣る駅なら、家賃6万円から8万円の物件も見つかります。万が一売上がゼロでも、出ていく金額は家賃分にとどまります。家賃15万円の物件で売上が5万円や10万円にとどまれば、毎月の赤字が積み上がっていきます。

1件目は、売上ゼロでも6か月以上耐えられる家賃で選ぶ。夏苅社長が示す基準は、運転資金を最低でも6か月分は確保できる物件であること。固定客がつくまで時間のかかるサロンなどは、半年ではなく1年分を見ておくとよいといいます。

稼げない物件はない。先に決めるのは物件の「位置づけ」

冒頭の言葉には続きがあります。夏苅社長は、家賃が高い、場所が悪いという理由だけで物件を切り捨てる必要はないと考えています。「渋谷駅徒歩0分で坪単価3万円みたいなところでも、収益の生み方はあるかもしれない。逆に駅から徒歩20分でも、広さがあるなら撮影スタジオにすればいいし、駐車場が取れる、光がよく入るといった良さもある」。決め手は、お金を稼ぎたいという自分の都合ではなく、利用者の目線に立ち、どんな場所なら自分もその用途で使いたいかを考えることだといいます。

そのうえで、夏苅社長が最も大事だと語るのが、物件の「位置づけ」です。「この物件はとにかく稼ぐためにやるのか、自分の趣味や仕事場も兼ねて経費が少しでも浮けばいいのか。その位置づけは最初にすごく大事だと思います」。普段は家で仕事をしていて、気分転換に最寄りの駅で作業したい人が、使わない時間を貸し出す。それなら家賃がまかなえれば十分という期待値で選べばいい。収益を目的にするなら、収益に特化した物件を選ぶ。物件ごとに「何のためにやるのか」を決めておくと、選ぶ基準も撤退の基準もぶれません。

ニューオ自身も、この考え方で物件を選んでいます。コストを差し引いても確実に合うと判断した物件は、顧客が手を挙げなくても自社で引き受けることがあるそうです。「一度1,000円を払ったら、毎月100円が必ず入ってくるなら、10か月で回収できるから、1,000円払ってみよう、という感覚です」

一方で、顧客に物件を勧めるときに「絶対に売れます」とは言い切らないといいます。「投資は自己責任ですし、同じ物件でも内装や運営で結果は変わる。そこまでうちが請け負わない以上、強くは言い切れないんです」。仲介する立場の慎重さと、物件を見る目への自信。その両方があるからこそ出てくる言葉です。

売却は撤退だけではない。出口から見た参入者の変化

ニューオは、レンタルスペースや民泊のM&A(事業譲渡)の仲介も手がけています。売り手の事情を聞くと、撤退が多いのは事実だといいます。ただ、それだけではありません。「ライフスタイルが変わったから手放そうとか、勤め先の事情で副業を整理しなければいけないとか、いろんな人がいます」。黒字のまま売却に至った例も何件もあり、大阪の約50平米の中型スペースが、利益の3年から3.5年分にあたる1,200万円ほどで売れた例もあります(2025年夏ごろ)。夏苅社長が仲介したなかで、レンタルスペース一件あたりの単価としては、これが最も高い価格だそうです。

買い手の顔ぶれも変わってきました。以前は資金の多くない個人や、感度の高い早期参入者が中心でしたが、最近は本格的な不動産投資家が参入し始めています。「都内の不動産だと利回りは3%から5%くらいで、20年かけて回収するイメージ。それなら4年、5年で回収できるならいいよ、という人がちょこちょこいます」。そうした人は、収益に加えて自分も使える場所であることに価値を感じている人が多いといいます。

人の流れは民泊との間にもあります。民泊の規制強化を背景に、民泊を運営していた人から「レンタルスペースを教えてほしい」という相談が増えているそうです(逆向きの相談もあります)。無人で運営できる点に魅力を感じての相談が多いものの、民泊向きの物件がそのままレンタルスペースに向くとは限りません。転用時の注意点は民泊規制強化とレンタルスペース|時間貸しとの違いと転用の注意点で整理しています。

始め方と同じくらい、手放し方にも選択肢が増えている。出口を描いておけることも、物件を選ぶうえでの安心材料になります。夏苅社長が運営する「ユウカツ」では、民泊・レンタルスペース向けの賃貸物件に加えて、売買物件やM&A(事業譲渡)物件も掲載しています。運営者向けのセミナーやイベントも定期的に開かれており、レンタルスペースのM&Aをテーマにした回もあります。これから始める人向けに、基礎知識や用語をまとめたページも用意されています。物件探しの入口として、のぞいてみてください。

参照URL https://yukatsu.jp/ https://yukatsu.jp/ma_properties https://yukatsu.jp/events https://yukatsu.jp/beginner https://newo.co.jp/

夏苅社長への一問一答

いまからレンタルスペースを始めても遅くありませんか?

遅くはありません。ただし始め方は変わっています。物件の利用許可は以前より取りやすくなった一方で、家賃の上昇と施設の増加で、収支が合う物件は減っています。小さいスペースは撮影、シネマ、ジム、サロンなど用途を特化させることが前提になりつつあります。

レンタルスペースの回収期間はどのくらいを見込むべきですか?

夏苅社長は2〜3年の期待値で物件を探すことを勧めています。以前は1〜2年での回収が前提に語られることが多かったものの、今の家賃と競争環境では、その前提で試算すると見込みが甘くなりやすいためです。

1件目はどんな物件を選べばよいですか?

売上がゼロでも6か月以上耐えられる家賃の物件です。夏苅社長は、都心の家賃15万円前後の物件で始めて半年から1年で撤退するより、家賃6万〜8万円の物件で運営を学ぶ方がよいと話しています。固定客がつくまで時間のかかるサロンは、1年分の運転資金を見ておくと安心です。

最初から運営代行に任せてもよいですか?

できれば1件目は自分で運営した方がよい、というのが夏苅社長の考えです。どんな作業が大変で、何をすればどんな予約が入るのかを知らないと、委託先の提案をそのまま受け入れるしかなくなります。代行に任せる場合も、初期投資の金額と回収見込みの根拠を確認してから判断します。

レンタルスペースは売却できますか?

できます。撤退のための売却が多い一方で、ライフスタイルの変化などを理由に黒字のまま売却される例もあります。夏苅社長が仲介した大阪の約50平米のスペースは、利益の3〜3.5年分にあたる1,200万円ほどで売れました。最近は不動産投資家が買い手として参入し始めています。

ABOUT

ニューオ株式会社のウェブサイト

ニューオとは

2018年設立の不動産会社です。民泊・旅館業やレンタルスペースとして運営できる物件の仲介を軸に、不動産の売買・管理、民泊の運営代行、遊休不動産の活用まで手がけています。代表取締役は夏苅良社長。

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ユウカツとは

ニューオが運営する、民泊・レンタルスペース向けの物件情報とコミュニティのサービスです。賃貸・売買・M&Aの物件を探せるほか、会員同士の情報交換や、銀座のラウンジでの相談会・交流会があります。

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編集後記

取材を通して印象に残ったのは、「稼げない物件はない」という自信と、「絶対に売れるとは言い切らない」という慎重さが、同じ人の中で矛盾なく並んでいることでした。物件には必ず何かしらの価値がある。けれど、それを引き出すのは借りた人の目的と運営です。だからこそ、最初に位置づけを決める。数多くの物件を見てきた仲介の現場から出てきた、地に足のついた物差しだと思います。なお、本記事は編集部の取材に基づくもので、掲載にあたって対価は受け取っていません。

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